休日に全身脱毛
本日、配達された新聞の折り込み広告の中に、化粧品メーカーのものが二社あった。
「使えば美肌が貴方のモノ‥全品無添加化粧品」「朝も夜もお手入れ簡単1・2・3無添加化粧品」。
どちらも使用前、使用後の拡大写真と、愛用者たちの写真とコメント付きだ。
すっかり白然化粧品ばやりになった。
わたしがお化粧を始めたのは十代の後半からだ。
眉毛を抜きすぎたり、アイシャドーをべったりつけたり。
つけマツゲまで買った。
ジリジリと真っ赤から真っ黒に日焼けするのが好きで、つい最近までオイルを全身に塗りたくって、紫外線バンザイ、とプールサイドでマクロのように転がっていた。
いま、五十歳を目前にして、数年前にできた右頬のシミを見ても、さあ、なんとかせにやあかん、とまではいきり立ちはしない。
にもかかわらず、雑誌の化粧品記事や広告を熟読玩味しながら、やはりあれこれ迷うわけだ。
思いきってやってみようか、でもちょっと高いな。
顔には何もつけないのが一番っていう意見もある。
でもお手入れはやればやるほどいいっていう人もいる。
スッピンが続くと化粧のノリが悪くなる割が悪魔なのか天使なのか耳もとでささやくのである。
もうそろそろ、この手のドツボから解放されたい。
今は自然モノ化粧品がたくさん出回っている。
わたしは化粧品のビンの裏に書かれた成分表示を気にするようになった。
そして、化学物質を肌につけるのがだんだんいやになってきた。
自然モノ1○○パーセントをうたっていてもわたしの肌にOKかどうかわからない。
化学物質の方が安定している場合もあるかもしれない。
しかし、べストよりはベターを求めて、わたしも少しずつ自然モノで安全な化粧品を探し始めた。
自然の化粧品にもいろいろあるけど、どのようなものがあるのか。
どういう点が普通の化粧品よりいいのか。
うぐいすのフン、へちま水、椿油、うどんのゆで汁シャンプーなど、人によっては、トラディッショナルな自然モノは、「そりゃ、昔は使っていたけれど……」と見向きもしない。
ところがドッコイ、いっけんダサダサ系の自然界。
なかなか興味尽きない宝の山なのである。
これでは、わたしが実際にやってみたものの中でも、特に面白くて、気持ちいいと感じたものを紹介したい。
思わずわたしがのめり込んだマニアックな方法、フリークめいた方法、噂の化粧品、日本のおばあちゃんたちが昔から使っていたもの、防腐剤不要の化粧品、純粋な石けんなど。
作っている人たち、売っている人たち、使っている人たちのイキイキした心意気が伝わってきたものを取材した。
これでとりあげたもの以外にも、漢方生薬配合の自然化粧品や、欧米の伝統的オーガ二ックコスメ、歩き方から生き方まで、洗練されたものはたんまりあるだろう。
使い方から効果まで。
顔、肌、髪、全身の美容法から着るもの、履きものまで。
皮膚も中身も丸ごと全部、トータルな意味でからだをきれいにしたい、という願いをこめて。
美肌のためのお手入れ法、少しでも参考になったらと思います。
五十年間、うどんのゆで汁で髪を洗いつづけたMさん(六十四歳)は白髪が少ない。
黒髪がツヤツヤ、量もたっぷりだ。
「髪、きれいですね」と、なにげなく、わたしはいった。
すると、「うどんのゆで汁で、洗ってるのよ」「うどんのゆで汁って、あのズルズルつて食べる?」「そう、十四歳のときから、ずう−っと」うどんのゆで汁で髪の毛を洗っている。
驚きました。
天変地異でひっくりかえるくらいにあまりわたしが驚くので、Hさんは恥ずかしそうにしていた。
けれど、どこか確信にみちた表情だった。
六十四歳になるこれまで髪を染めたことはないという。
遠くから見れば、黒々と毛染めしすぎちゃったほどの漆黒だし、六十歳をすぎたら少々はうすくなってくるだろうに、バサツとカツラでもかぶったような豊富さなのだ。
おもいっきりおいしそうなお菓子みたい。
毛染めしすぎたとかバサツとカツラかぶったとか、悪いたとえで中しわけないけれど、わかりやすいかと思って。
充分に天然なのである。
そして、単に髪の量が多いってわけじゃない。
触らせてもらったら、猫っ毛なのに指のさきに髪のコシが一本一本、ズンと伝わってくるではないか。
親指とひとさし指で髪をよじってみた。
するとそれぞれが独立した一本の毛として、生き生きと存在しているふうだ。
まるでお宝状態。
髪は女の命!まさにそれにあたいする。
生きてるよ、この髪の毛は。
そういう感触なのである。
「うどんのゆで汁で洗うと、髪がつるつる、やわらかく、ぬめっこくなり、髪もしっかりしてツヤが出てくるから不思議なの。
子どものころからきれいな絹糸のようだと、みんなに褒められました。
二十歳のころから髪の手入れは、純粋の椿油をほんのたまにつけるくらいでしたよ」輝かしい髪の毛の個人史である。
市販のヘアコンディショナーの〈髪のパサつきを押さえてスタイリングしやすくするッサラサラしっとりの手ざわりと、自然なツヤをあたえ・・・的CMにどっぶりつかっていると、髪の毛をさわるときの手のひら、指の感覚もズレてくるというもんだ。
おおよそ髪の毛の個人史といえば、白髪になったり、染めたり、パサついたり、うすくなって、ついにハゲてくる、ってのがおきまりなのに。
市販のシャンプーは使ったことはないという。
しかも、ゆで汁は、自分で打ったうどんである。
「ゆで汁は母がやっていて教わったのですが、まわりが石けんで洗うような時代になっても、わたしはゆで汁のほうがいいなあ、と思って使いつづけてきました。
いまでも抜け毛が少なくて、白髪もほとんどないでしょ」ほんと、ほんと。
自然派中の自然派だ。
最初はなにげなくいったつもりだったが、わたしだってこの世で髪の毛をうんとこさ見ているのだから、やはり彼女には他の人にはないハリやツヤがあったに違いない。
さかのぼって……明治・大正までの女性たちは、年に数回しか髪を洗わなかったらしい。
ふだんはせっせと「ツゲのくし」に椿油をつけて、髪をすいて汚れを落としていた。
朝シヤンなんて、めっそうもない。
シャンプーは特別日、イべントだったのだ。
なにで洗っていたかといえば、卵白、うどんのゆで汁、漢豆と呼ばれる小豆を粉にひいたもの、ヌカをもんだ汁、のりなど。
どれも汚れを吸いとる力がある。
石けんが一般に普及したのが、昭和になってからである。
しかし、当時、市販のこの手の石けんで洗髪すると枝毛ができたので、けっきょく卵白など、身近なものに戻した人もいたようだ。
粉末シャンプーが売り出されたのが一九五五年だ。
H式シャンプーも明治・大正・昭和・平成と受けつがれてきたのである。
ちなみに、うどんのゆで汁で食器を洗いつづけて二十年という食堂が名古屋にありました。
油ものなどの汚れ落ちもよく、手も荒れないとのこと。
Hさんのうどんのゆで汁シャンプーをわたしも試してみたい。
H式うどんの打ちかたをご自宅をたずねて教えてもらった。
ぬるま湯カップニ杯くらいで、材料の中力粉・塩を耳たぶくらいの固さにしてよくこねる。
ビニール袋にいれて二十分から三十分くらい、寝かせておく。
ビニール袋にいれたまま、板かテーブルの上で、麦踏みのようにカカトを使って丸く平らになるように、よく踏んでのばす。
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